【社説】公正と感動への渇望を表した「ペク・チョンガン・ストーリー」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2011.05.30 10:42
韓国社会は公正なのか。この質問に「そうだ」と答える人は多くないだろう。しかし先週末、国内のある放送局のオーディション番組の最終決勝で優勝した中国同胞青年のペク・チョンガンは「そうだ」と答える可能性が高い。貧しい中国同胞出身というハンディキャップを克服し、彼は3億ウォン(約2200万円)の優勝賞金の主人公になった。実力と努力で条件の不利を乗り越え、ペク・チョンガンがつかんだ「コリアンドリーム」は、韓国社会がどれほど公正と感動を渇望しているかを改めて見せる一例にすぎない。
歌唱力だけで見るとペク・チョンガンは優勝できなかったかもしれない。準優勝したイ・テグォンが審査委員団の評価ではより高い点を受けた。しかし全体点数の70%を占める視聴者の評価でペク・チョンガンはイ・テグォンを圧倒した。文字投票に参加した視聴者が望んだのは、歌の実力以上のものだったためと考えなければならない。韓国に出稼ぎに行った親と離れて暮らす寂しさを紛らわすために幼い頃から一人で歌を歌い、中国・延辺方言を使う彼から、人々はストーリーの可能性を発見した。相対的に弱者であるペク・チョンガンが優勝する感動のストーリーを作り出すことで、自ら公正社会の具現に寄与したという自己満足のために彼を熱心に応援したのだ。
公正と感動に対する渇望は昨年のオーディション番組「スーパースターK2」で、換気扇修理工のホ・ガクをシンデレラにした国民投票の威力で確認された。視聴者が当落を決めるコロシアム型オーディション番組が流行しているのも、公正と感動に対する欲求のためだ。実力を武器に底辺から天辺に垂直上昇する、胸が熱くなるようなストーリーで感動を受けたいのが、国民参加型オーディションフォーマットに熱狂する人々の心理だ。単に感動が伝達される受動的な観戦者から、積極的に感動を作り出す能動的な参加者に変貌している。インターネットと携帯電話、ソーシャルネットワークサービス(SNS)など疎通技術の革命が生み出した新しい現象だ。公正と感動に対する欲求を満たすことができなければ、芸能人はもちろん、政治家も企業家も成功できない世の中だ。