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【コラム】「独裁打倒」という言葉=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2019.05.14 10:16
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政治は「共通的なもの(the common)」の言語ゲームだ。政治に加担したさまざまな集団が「民生」「福祉」「安保」「民主主義」などの記標を口癖としているのは政治が根本的に「公共領域」に向かっているためだ。政治談論の基本的な規則を知る政治家は、私的な個人としての利害関係を最大限隠す。時に偽装であっても、それが政治ゲームの基本的な礼儀だ。すべての政治は、その属性上、権力を指向するが、その欲望さえも公的定義の言語で包装する。「正しくない政治は偽物」という定言命令が軽々しい欲望を羞恥にするためだ。そして最小限の恥を知る政治力学が稼動するとき、政治の基本技が用意される。あの奥深い内面に隠された私的欲望が公共性という超自我の検閲の前に頭を垂れるとき、政治は最小限の倫理と良心を担保することになる。母に向かう欲望をあきらめるオイディプスのように、政治家が公的利益のために私的野望を努めてあきらめるふりでもするときはじめて、最も初歩的な水準であろうとも、なんとか政治らしい政治が始まる。

このような点で見ると、最近の韓国政治はほとんど野蛮の水準に落ちている。「野蛮」とは、イドとリビドーと本能が理性的自我と超自我の検閲を全く経ないまま外化する現象をいう。「独裁打倒」という言葉も実に久しぶりに聞いた。この言葉が真正性を持つには、この言葉を発する主体がこの話を口の外に出した瞬間、逮捕・拘禁・拷問・死などの恐怖を経験するかもしれない環境が前提にならなければならない。大韓民国で、この言葉にはそのようなすさまじい歴史が記録されていて、そしてこの言葉は命をかけて民主主義のために戦った数多くの苦難の人生を想起させる。しかし今は誰がこのような言葉を話しても捕まることはない。全く異なる状況の中で響くこの言葉が、むなしく滑稽な理由がまさにこれだ。開国以来、最悪の独裁政権を次々と生産し、そして彼らが立てた大統領をほぼ例外なく監獄に送った政党がこのような用語を使う珍しい時代にわれわれは生きている。数日前、巨大野党の院内代表は現職大統領を支持する人々を「タルチャン」〔月の光の娼女団(タルビッチャンニョダン))、極右指向サイト「日刊ベスト貯蔵所(略称イルベ)」の用語で、文大統領の支持者を中傷する言葉〕と呼んで物議をかもした。最大野党のおよそ70人に近い国会議員は大韓民国憲法によって監獄に送られた前職大統領の刑執行停止請願書を提出しながら、現政権をナチスに、そして犯罪容疑を持つ前職大統領の収監状況をアウシュビッツにたとえた。彼らが左派だと非難する対象を人類歴史上最悪の極右集団と比較しているのだ。巨大野党のある国会議員は集会で「4大河川ポ(=さんずいに伏)解体のためのダイナマイトを奪って文在寅(ムン・ジェイン)青瓦台を爆破しよう」と叫んだ。ついに数日前、大邱(テグ)集会でこの政党の院内代表は市民に「来年総選挙で圧勝させてほしい」と注文した。このすべての非論理とナンセンスが権力に向かった戦略的言語であることを自ら暴露したのだ。

 
問題は修辞だ。哲学者ウィトゲンシュタインの言葉通り「私の言語の限界は、私の世界の限界を意味する」。暗い本能と欲望は誰でも持っている。尊厳な人間だけが自己検閲を経る。先生は先生として、政治家は政治家として、芸術家は芸術家として、各自守るべきゲームのルールを有している。

政治言語の最も基本的な規則は私的利害関係ではなく公共の利益を先に掲げることだ。成熟した言語は真理と定義の略号によって悪と利己心と不道徳を検閲する。健康な言語は主体の中の暗い部分と戦うことによって破壊と悪意と不倫を克服する。暗い内面がいかなる服もまとわずに露骨に表現される時、われわれは体の醜悪さを目撃する。白昼の真っ昼間にさらされた精神の裸を見ることほど困惑することはない。非合理的合理化の言語でわれわれは死んだ精神、堕落した魂を見る。出口が消えた言語のアポリアには暗い欲望だけが肉の塊のようにひっかかっている。

言語が現実を作る。偽物の言語が偽物の信念を作る。信念になってしまった言語はそれ自体が物性を持つ現実になる。健康なフィルタリングを経なかった言語は利己的で破壊的な力になる。力を持つ少数の公人の悪い文章が悪い連結と結束で悪い現実を作る。もちろん政治は(哲学者ランシエールの言葉通り)一致でなく「不一致」を生産する。しかし不一致は動物でなく自己検閲と超自我のフィルタリングを経た成熟した人間の言語として成立しなければならない。それが政治の責任であり義務だ。

オ・ミンソク/文学評論家・檀国(タングク)大学教授英文学

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