金永熙＝米国のトランプ大統領をどう評価するか。

シュレーダー＝トランプ大統領を個人的に知らない。しかし歴代米国大統領の中で最高だとは言えない。レーガン元大統領の当選当時を振り返ると、当時の人々は映画俳優が大統領になったと心配した。ところがレーガン大統領は米国史上成功した大統領の一人に挙げられる。レーガン大統領は参謀の意見に耳を傾けた。（トランプ大統領のように）参謀の言葉を聞かず、２、３日に一回は世界を不安にさせるメッセージをツイッターに載せるような行動はしなかった。米国のように世界に大きな影響を及ぼす強大国の指導者なら、ある程度は予測可能でなければいけないが、トランプ大統領はそうでない。

金永熙＝世界が第４次産業に備えている。ドイツはＡＩ（人工知能）の実用化を含む第４次産業革命にどう対処しているのか。

シュレーダー＝ドイツでは第４次産業を「プラットホーム・インダストリー４．０」と呼ぶ。政・労・使と学者の４者がすべて集まって新たな種類の生産について議論し、その余波について議論して研究する。古くなった職場が消えるという懸念が台頭している。おそらく未来には最初の職業教育で得た職場をずっと維持することはできないだろう。最初の職業教育で職場を得ても、新しくアップグレードする教育、いわゆる生涯学習が日常化するだろう。例えば自動車産業の従事者は電気自動車時代を迎え、技術教育を受け直さなければいけない。ＡＩ時代を楽観している。人間の頭脳は大変な多様性を持っているため、これを１００％カバーする人工知能は事実上可能ではないと考える。人間の脳は機能だけで規定されない。人間の頭脳がする役割のうち最も重要なのが芸術と文化が属する感性的な部分だ。人間が持つ無限の創意性と多様性、新しいものを作ることができる想像能力、感性などを完ぺきに併せ持つ人工知能は不可能だろう。個人的にも新しい頭脳を持つ人工的な人間（新人類）がいる社会で暮らしたいとは思わない。私たちの子どもが生きていく世の中もそうであることを願う。

金永熙＝ドイツ統一がうらやましい。韓国とドイツの事情は違うが、統一に関して韓国がドイツ統一から得られる教訓は。

シュレーダー＝ドイツの統一状況と現在の韓国の状況はあまりにも違う。当時、欧州で東欧圏が崩壊して新しい形態の社会を探す過程で、ある意味、必然的に自由市場経済に進むしかない状況だった。ところが韓国では軍事的対決の懸念が強まっていて、これを何とか防がなければいけない状況に置かれている。韓国は政治的に平和な解決策を北朝鮮と見いださなければいけない状況だ。ところが今の北朝鮮政権は核兵器を保有しているとみられ、こうした核兵器を自らの民族を破壊するのに使用する可能性もある政権だ。これを防げる条件が周辺強大国との協力だと考える。米中露が北朝鮮に対して連携しながら圧力を加えてこそ可能だ。ところが米国大統領は現在、中国に対しては経済的圧力を、ロシアには孤立政策を進めていて、連携が難しい状況だ。周辺強大国が北朝鮮に対して共同の圧力を加える時、戦争危機を克服できると考える。また、韓国も前提条件はなければいけないが対話をしようという基本原則を持つことが正しいと考える。今はその時期ではないが、対話より良い方法はない。

金永熙＝友人のプーチン大統領に金正恩（キム・ジョンウン）委員長の挑発の牽制を要請できないだろうか。

シュレーダー＝現在、一つ良いと感じられるのは、文在寅大統領がロシアとの関係改善に関心を持っているという点だ。ブラント元独首相の東方政策の精神は経済協力を通じて近づくというものだった。ロシアと韓国がエネルギー分野で協力すれば成功すると思う。

◆ゲアハルト・シュレーダー元首相（７３）

弁護士と連邦下院議員、ニーダーザクセン州議会議員団長を経て第７代ドイツ連邦首相（１９９８－２００５年）を務めた。首相当時、「アジェンダ２０１０」と呼ばれる社会改革を断行し、ドイツ経済の国際競争力強化に力を注いだ。しかし改革案に対する抵抗のため２００５年７月の信任投票で敗れ、首相から退いた。２００６年からドイツエネルギー企業とロシア国営ガスプロムが共同運営するノルド・ストリームの役員を務めている。


＜インタビュー> シュレーダー元独首相「政治指導者なら国益のため選挙敗北も甘受」（１）