日本に学ぶノーベル賞 その4 伊藤乾教授「ロールモデルが必要」

日本に学ぶノーベル賞 その4 伊藤乾教授「ロールモデルが必要」

2009年04月19日15時46分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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  伊藤乾教授(写真)の経歴は特異だ。渡された名刺の名前の下には「作曲家・指揮者」となっている。下の方へ目を移して初めて東京大学大学院情報学環准教授であることがわかる。実際に彼は東京大学学部と修士課程で物理学を専攻した。しかし博士学位は総合文化研究科で取得した。学位と関係なく勉強した音楽の影響だ。

  同教授は世界的指揮者のレナード・バーンスタインの下で指揮を、尹伊桑(ユン・イサン)先生から作曲を学んだという。教授は「中・高校時代までピアノとバイオリン、チェロなどを学び、ミュージシャンとして育った」と話す。こうした経歴のおかげで今も東京大学学部生には物理学を、大学院では融合学問を教えながら時間がある度に全世界を歩き回って作曲・指揮活動をする。また多様な経歴と背景をもとに日本経済など日本の新聞にコラムを書き、テレビにも出演する。

  ノーベル賞との縁は2005年、国連で主催した「世界物理学の日」のイベントからだ。当時、イベントを準備しながら世界各国のノーベル賞受賞者たちはもちろん、審査委員たちとも一緒に作業をした。この経験をもとに新聞にコラムを書き、本にまとめたものが『日本にノーベル賞が来る理由』だ。彼は科学技術分野で日本でよく知られた新世代評者の1人だ。同教授はインタビューで、日本がノーベル賞を多く受賞した理由のうちのひとつとして「対称性の破れ(broken symmetry)に対する補償(compensation)」という論理を展開した。

  --「対称性の破れに対する補償」とはどういう意味か。

  「対称性の破れという物理学専門用語を借りて使った表現だ。わかりやすく言うとバランスが崩れることだ。日本が1945年、原爆の被害を受け、世界核物理学者たちは日本にすまない感情を持つようになった。49年、ノーベル物理学賞に湯川秀樹博士を勧めた人物がまさに原子爆弾の理論を提供したアインシュタイン・フェルミ・フランクのような人だ。68年、ノーベル文学賞を受賞した川端康成も同じだ。当時の雰囲気としては川端ではなかったとしても、日本の文豪の1人が文学賞を受賞することができたと思う。ノーベル財団は受賞者選定に“対称性の破れに対する補償と和解(reconciliation)」を基本戦略のうちのひとつとしている」

  --国際社会の補償心理だけでノーベル賞受賞を説明することはできないと思うが。

  「当然だ。日本がノーベル賞を多く受賞した第一の理由は明治維新以後、100年という歳月の間、基礎科学を直接研究してきた伝統のおかげだ。またほかの理由はお金、すなわち経済力と言える。基礎科学が発展するためには多くの投資をしなければならない。例えば素粒子研究にはかなりのお金がかかる。現在、世界最大の素粒子加速器はヨーロッパにある。日本も加速器がある。日本政府は毎年100億円(約1340億ウォン)のお金を今すぐお金にならない基礎科学分野研究開発(R&D)に支援している」

  --韓国でノーベル賞受賞者は金大中元大統領1人だけだが。

  「“まだ1人しか”というよりは“もう、1人出た”と考える方が正確だ。日本は明治維新から初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹まで72年の歳月がかかった。昨年、日本人ノーベル賞受賞者も40年前に提示した理論で受賞した人々だ。韓国の立場で言えば解放を迎えて60年経った。長期的ビジョンを持って基礎科学に投資して創意力ある人材を育てなければならない」

  --韓国の学界の問題点もあるようだ。

  「敢えてひとつ挙げれば軍事文化に根を置く権威主義と従順的文化だ。変化が必要だ。教授の横にいる人(学生)は無条件、教授に従わなければならないのが韓国なら、日本の学界はより自律的だ」

  --韓国はこのごろ理工系忌避現象が深刻だ。

  「重要な問題だ。日本も特に違わない。日本の若者たちは理工系を指して“3K”と呼び避けている。“危険、きつい、汚い”の“き”(ki)の発音から作った用語だ。この問題に対しては韓国と日本が力を合わせてでも解決しなければならない。子供たちに科学者として立派なロールモデルがいれば次の世代にもノーベル賞が出る。同じ3Kでもスポーツを子供たちがやりたがる理由が、スポーツスターのようなロールモデルがいるからだ」
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