しかし北朝鮮政権はこれを「南朝鮮ブルジョア不良風」「資本主義黄色風」などと批判し、取り締まりを強めている。金正恩も２年前に執権した当時、脱北者問題を取り上げながら韓流の遮断を促した。このため特別取締組「常務組」（一種のタスクフォース）まで投入し、特別取り締まりを行っている。取り締まりは容易ではない。過去はＶＴＲまたは「アル」という隠語で呼ばれるＣＤを利用した流通と視聴だったため、税関の検査で摘発しやすかった。また、取り締まり班が韓国ドラマを視聴するところと疑われる場所を急襲し、安全器（家庭用電流遮断装置）を切れば、ＶＴＲやコンピューターに残っているテープやＣＤを証拠にできた。今は携帯用保存装置（ＵＳＢ）を主に使用するため摘発が難しい。最近は爪ほどの大きさのマイクロＳＤに入れて流通したりもする。

韓国の映画・ドラマの複製、流通で大金を稼いだ勢力の場合、取り締まりを避けられるほどになっている。賄賂も登場し、商人の間の結託も生じているという。これを通じて中央級の取り締まりまで避けるほどの地下経済が構築されたという韓国政府当局と専門家の分析を見ると、北朝鮮当局としては相当な悩みであるに違いない。

韓流は北朝鮮住民が韓国社会を理解する窓の役割をする。もちろん副作用もある。ドラマで描かれた韓国社会に対する憧れ・幻想を抱いて脱北し、実際に韓国に来てみたところ、現実は違っていたというのがその一つだ。しかし統一の過程で北朝鮮住民が体験する文化的な衝撃を最小化する緩衝機能が大きいと考えられる。今日も北側の領土では「経験できなかった」南側の国の話と想像もできない楽しさを追いかける住民の危険な鬼ごっこが続いている。


北朝鮮を揺さぶる韓流…ドラマ『星から来たあなた』から医薬品まで（１）