「私はこうした町内を『ひとつ屋根の下の都市』と名付けました。家だけが住居空間のすべてではありません。都市全体を大きな家だと考えればまったく違う所有概念ができ自由になります。暮らしと社会を理解する無数の層位、レイヤーができます。『野生の思考』と言いましょうか」。

坂口は東日本大震災後に既存の政府と既得権が自分たちにしてくれることは何もないということに気付いた。例えば安藤忠雄のようなスター建築家が語る建築哲学はすべて嘘というものだ。彼らが語るのは結局お金と権力、トップダウンの思考方式が限定した世界だと批判する。

「“手”を使いながら具体的に考えて生きる唯一の人々がホームレスでした。彼らはお金のために家は作りません。動物の巣のようにただ生き残るために最も純粋な形態の家を作ります。自分を守って生き残れることを主張することが私が建てた新政府の価値観でしょう」。

坂口の最大支持勢力は青少年だ。全国から「動く家」を作りたいと問い合わせてくる中高生が彼には希望だ。少しずつ、１歩ずつ変わる社会に向け彼は静かに最善を尽くす。

「フジテレビの人気番組にレギュラー出演し、来年１月１日の夜９時にＮＨＫラジオの特集番組に出るのは完全に別の角度で未来を建設する彼らを応援するためです」。

彼は新たな後継者が出てくればいつでも新政府の首相を退くとし、「韓国の青少年も可能だ」と賛同を望んだ。




３万円で「動く家」作った坂口恭平（１）