エアバスは１９７０年、フランス・英国・ドイツ・スペインの４カ国がボーイング社に対抗するために作った会社だ。ドイツのハンブルクで航空機の前・後方胴体、英国のブロンプトンで翼、スペインのヘタフェで尾翼、フランスのトゥールーズで操縦席と中間胴体を作るという形だ。１００カ国余りで約５万５０００人に達する社員はもちろん、協力企業だけで７７００社になる。エアバスのファブリス・ブレジエ会長は「私たちの事業は子供の遊び場ではない。本当に複雑な産業だ」と紹介した。

この日一日で記者はポーランド系マーケティング担当副社長、英国系マーケティング担当理事、ドイツ系製品開発責任者、イタリア系広報担当者、そしてフランス系ブレジエ会長に会った。多様な構成員による協業は、ライバル会社ボーイングと区別される特徴だ。彼は「１つの事業所に他国からの人材を２０％以上入れることを原則にする」として「私たちは単に多様な国籍・人種で一つになった組織ではない。多様な文化が混じり合って沸き立つ溶鉱炉（ｍｅｌｔｉｎｇ　ｐｏｔ）」と話した。

彼は「他国籍の社員が勤めているが、同じ『エアバス思考方式』が存在する。簡単に聞こえるが非常に実現しにくい目標」として「完ぺきな多様性と創意性、相互補完性を事業の隅々に最大限適用することが革新の銃弾（ｉｎｎｏｖａｔｉｏｎ　ｂｕｌｌｅｔｓ）」と強調した。彼は「ボーイングは米国政府から適切な支援を受けて意思決定も早い。だが私たちは組織の複雑性をうまく管理してボーイングよりも国際的でパートナーシップを重視する会社として新たに出た」とつけ加えた。

複雑で多岐にわたる事業を導く「航空マエストロ」のリーダーシップは何だろうか。インタビュー前に会ったエアバス社員に「ブレジエ会長はどんな人か」と尋ねた。一様に「率直な（ｓｔｒａｉｇｈｔｆｏｒｗａｒｄ）の人、スマートなリーダー」という答えが返ってきた。「エアバスをスピード感のある組織に変えた」という評価も終始一貫していた。


＜世界革新企業家、未来５０年を語る＞（３）エアバスのブレジエ会長…競争力の秘訣（下）