【コラム】ようやく青年期に入った韓国の基礎研究
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2013.11.12 17:48
7月に日本で開催されたアジア太平洋物理学会に出席し、日本の元老物理学者と対話した。そして日本の基礎研究の伝統についてもう一度考えた。この物理学者は第2次世界大戦後の厳しい時代に、朝永振一郎教授の『量子力学』で新しい学問分野を勉強し、著者を訪ねて気になる部分を尋ねたという。これを契機に2人の学者の縁は朝永教授が死去する1979年まで続いたという。
朝永教授は量子電磁力学分野の基礎研究業績が認められ、1965年にノーベル物理学賞を受賞した。これに先立ち1937-39年には、ドイツのライプツィヒ大学で量子力学を創始したヴェルナー・ハイゼンベルク教授と一緒に研究した。朝永について語る時、理化学研究所で彼の師だった天才的物理学者、仁科芳雄を欠かすことはできない。ノーベル賞は受賞していないが、仁科は1931年に理化学研究所に研究室を設置した後、朝永とともに、49年に日本初のノーベル物理学賞受賞者となった湯川秀樹をはじめ、小柴昌俊(2002年受賞)、小林誠・益川敏英(2008年共同受賞)などノーベル科学賞受賞者ネットワークの基盤を固めた。仁科は日本現代物理学の父と呼ばれる。日本の基礎科学レベルは20世紀半ばにすでに世界最高レベルに達していた。
韓国社会でもノーベル科学賞受賞に対する熱望が大きい。基礎研究の競争力強化に向けて新進研究者支援を強化し、挑戦的・創意的研究の強化、科学技術外交の強化など、さまざまな案が提示されている。しかしよく見ると、政府が主導する基礎研究推進の歴史はそれほど長くはない。89年に基礎科学研究振興法が制定され、2006年に第1次基礎研究振興総合計画が樹立されたが、ようやく青年水準になったにすぎない。韓国政府は2017年に政府研究開発予算の40%を基礎研究に投資することにした。多くのノーベル科学賞受賞者が20、30歳代の研究成果を基礎に60歳代以降にこの賞を受ける点を勘案すれば、韓国人学者が近くノーベル科学賞を受賞することを期待するのは無理かもしれない。