米国オバマ政府は２０１６年、２０年以上続けていたミャンマーに対する経済制裁を全面解除した。しかし米国と欧州はアウンサン・スーチー政府の少数民族弾圧に依然として批判的ながらも、ミャンマーの潜在的な軍事戦略的価値のために躊躇（ちゅうちょ）している。中国はこの隙に割り込み、ミャンマーのスーチー政府を確実な親中政府にしておこうと狙っている。

中国のパキスタン抱き込みはさらに規模が大きい。中国は２０１５年、パキスタンのインド洋拠点都市グワダル港の運用権を向こう４３年間の予定で獲得した。グワダル港には中国海軍艦艇が寄港することができる。これは中国のインド洋進出の足がかりにもなる。パキスタンのグワダル港と中国新疆ウイグル自治州の最も西側の都市・喀什をつなぐ３０００キロ周辺を中国・パキスタン経済回廊（ＣＰＥＣ）として開発する。２０３０年に完工する経済回廊建設プロジェクトに中国は４５０億ドルを投資する。中国がマラッカ海峡を経ないで陸路でインド洋に進出する道が開かれることになる。中国はこのように東・西・北の三方向からインドを包囲しようとしている。

中国の南西進戦略に、インドはインド～ミャンマー～タイをつなぐ高速道路網を建設して東進政策で対応している。インドのモレからミャンマーを経てタイのメーソートに達する１４００キロの内陸高速道路だ。このようにインドはインド洋とマラッカ海峡を経ないで東南アジアに進出する道を開く。

ユーラシアの二人の巨人が雌雄を争う東・西南アジア郊外周辺の遠くから韓国まで引き込んで中国を包囲しようというのが、日本の扇動でトランプが推進しているインド太平洋戦略だ。インド太平洋戦略をトランプの国家安保戦略と重ねてみると、インド太平洋戦略は内容で国家安保戦略は形式だ。

包囲に逆包囲、再び包囲の無限反復が、まるでオニグモが互いに巣を張る争いのようだ。キッシンジャーはこのような包囲と逆包囲を囲碁ゲームにたとえる。彼は『キッシンジャー回想録　中国（Ｏｎ　Ｃｈｉｎａ）』という著書の中で囲碁に１６回も言及して碁譜まで載せた。彼は中国の国共内戦のとき、国民党の蒋介石と共産党の毛沢東の戦略について「両側は囲碁のように相手を互いに包囲する戦略を駆使した」と記した。習近平の一帯一路とトランプのインド太平洋戦略もこれと違わない。

これに関連し、１９７９年の中国のベトナム侵攻が示唆するところが大きい。ベトナム戦争が終息した７５年、隣のカンボジアではポル・ポトが導くクメール・ルージュ政権が成立した。クメール・ルージュ政権は反ベトナム路線を歩んだ。ベトナムは２年前に米国を追い出した勢いに乗って７８年１２月、２０万の兵力と優れた装備でカンボジアを侵攻した。クメール・ルージュ政権を追放してカンボジア人民共和国という傀儡政権を立てた。カンボジア国土の大部分を占領したベトナムはラオスまで引き込み、インドシナ連邦の構成に着手した。インドシナが連邦形態としてベトナムの天下になれば、中国は背後からはソ連、前からは新たな東南アジアの盟主ベトナムの圧迫にさらされることになる。

中国は７９年２月、歩兵２９個師団２０万の兵力と１７０機余りの空軍機を動員して国境を越えた。しかし、米国との長い戦争の間に鍛練され、その時としては最新鋭武器で武装したベトナム軍の抵抗で中国はジレンマに陥った。結局、中国はベトナムの悪い癖を直すのに成功したとしてベトナムから撤収した。ベトナムもインドシナ連邦樹立の野望を諦めて８０年代にカンボジアから退いた。

ベトナムのインドシナ支配を阻止するのに成功した中国が、いま東南アジアで何をしているのか。中国はベトナム・ラオス・タイ・ミャンマーから雲南省昆明まで四通八達につながる高速鉄道を建設する計画に着手した。海上では南シナ海を「中国の海」にしようとしている。中国は陸上と海上のシルクロードという美しい名前で隆盛した唐・清国時代の国際的地位を取り戻し、１９世紀に西洋列強と日本から受けた侮辱を雪辱する「中国の夢」を実現しようとしている。






米国のインド太平洋戦略、中印の文明衝突を予告…韓国は？（３）