近代オリンピック（五輪）開拓者のピエール・クーベルタンの一言は強烈だ。「五輪の意義は勝利するところにはない。参加するところにある」。

胸に響くが、現実は違う。この精神を１００％受け入れるのは難しい。競技に参加する限り、勝つことが栄光だ。“フリーランサーオリンピアン”アン・ヒョンス（いや、ビクトール・アンが正しい）は勝ったからこそ神話となった。彼にスポットライトが集まるほど、韓国ショートトラック男子代表の影は濃くなる。男子選手はソチで一つもメダルを首にかけられなかった。彼らはうなだれて競技場を抜け、あわてて身を隠した。青春の挫折は痛ましく見えた。

私は主張する。「男子選手たちに温かい拍手と金メダルを与えなければいけない」。この言葉は競技で負けた選手に送る儀礼上の激励ではない。彼らはメダルを取れなかったが、負けてはいない。敗北者は、彼らをかばうことができなかった私たちの社会だ。ロシアに帰化し、３冠王の偉業を成し遂げたビクトール・アンと重なり、選手たちは妙な視線を浴びなければならなかった。「派閥争いで追い出された最高の選手に代わりその席を占めた二流」。

ビクトール・アンが故国に背を向けた理由の一つだったスケート連盟の派閥争いは、確かに改善しなければならない課題だ。しかしビクトール・アンは記者会見で、「（韓国に）派閥はあったが、それが帰化する決定的な要因ではなかった」と述べた。「運動がしたかった」と強調した。

選手たちは４年間頑張って五輪を準備した。ソチの氷盤の上に彼らはすべてのものを注ぎ込んだ。ところがビクトール・アンが常勝すると、報道機関やネットユーザー、そしてあちこちで感情が表れた。朴槿恵（パク・クネ）大統領も惜しんだ。朴大統領は公開席上で「アン選手の問題が派閥主義、派閥づくりなど体育界の底辺にある不条理と構造的な問題によるものではないか省みなければいけない」と述べた。文化体育観光部次官は大統領の言葉を受け、「スケート連盟の不正や国家代表選抜方式など全般的なシステムを調べてみる」と述べた。

その心情は十分に理解できる。問題はタイミングだった。こうした一連の発言は現代表選手が実力より派閥の力で選ばれたという疑惑を招いた。ソチの選手とコーチ陣が大きな圧迫感に苦しむしかなかった理由だ。特に今回の五輪で韓国男子選手の失格が多かったのもこのためだと考える。必ずメダルを取らなければいけないという負担のため、選手たちの体は重く見えた。無理な滑走と追い抜きはそこから出てきたのではないだろうか。

実力を公平に評価し、公正な競争環境を作るのは絶対に必要だ。ただ、五輪が終わった後に問題を提起し、解決策を静かに考えればよかったのではないだろうか。相手選手と激しく争う時点に、あえてそのような指摘をする必要があったのだろうか。その一言は将来がある若い選手の胸に癒えない傷として残るだろう。選手たちは派閥の受恵者ではなく被害者にすぎない。傷ついたこの青年に温かい拍手をこめた金メダルが必要な理由だ。

キム・ジョンユン・ニューメディア・エディター