韓米自由貿易協定（ＦＴＡ）がいよいよ１５日午前０時に正式に発効される。発効と同時に米国は韓国に自動車など８６２８品目、韓国は米国にワインやカバンなど９０６１品目の関税を即時撤廃する。世界最大の米国市場に韓国商品のほとんどが関税障壁なく出入りできる道が開かれるのだ。もちろん韓国にもほとんどの米国商品が無関税で入ってくる。市場がそれだけ大きくなる一方で競争も激しくなる。ＦＴＡは機会であり挑戦だ。ＦＴＡによる開放の挑戦がいくら大きかったとしても、貿易で成長してきた韓国としては韓米ＦＴＡがもたらす絶好の機会を忘れることはできない。われわれはすでにチリと欧州連合（ＥＵ）とのＦＴＡを通じ開放の波を超え国益増大の機会を求めた経験と実力を持った。

ＦＴＡで得ることができる最大の国益は単純に輸出を増やすのではなく国民の所得を高めて働き口を作り出すことだ。内需市場が狭い韓国は自由貿易を通した市場拡大で活路を見出すほかはなく、韓米ＦＴＡはその道を広げたのだ。野党と一部団体は相変らず韓米ＦＴＡの破棄と再々交渉を主張する。しかし協定の一部内容が不満としてもこれを戻して無効にするのはより大きな国益の損失と国格の損傷を意味する。反対勢力はまず韓米ＦＴＡでできる所得増大と雇用創出の機会を何に変えることができるのかから答えなければならない。

問題はＦＴＡが発効されたからといって自然に所得が増え雇用が生まれるのではない点だ。外では関税撤廃の効果を極大化できるよう競争力がある商品を作り出さなければならず、内では開放の影響を最小化できるよう経済体質を強化しなければならない。ＦＴＡを通じた市場拡大の機会が実際の国益増大につながるように分野別に多角的な努力を傾けなければならないという話だ。そうしようとするなら、いまになって韓米ＦＴＡの破棄や再々協議を取り上げて足を引っ張るのではなく、どのようにすればＦＴＡの効果を高められるかをともに悩まなければならない。

政府は輸出大企業だけでなく中小企業が韓米ＦＴＡをしっかり活用できるよう積極支援し、米国産輸入品が韓国市場の秩序をかき乱さないよう公正な競争環境を用意しなければならない。これとともに競争力に差のある農業と製薬・サービス分野では影響を減らし体質を強化できる対策をまとめ、支障なく推進しなければならない。また、政府が再協議を約束した投資家国家訴訟制度（ＩＳＤ）と関連した条項も幅広い意見のとりまとめを通じ合理的な調整案を導き出さなければならないだろう。

もう賽は投げられた。韓米ＦＴＡをめぐるこれまでの論議をやめ、その効果を極大化するために国力を集めなければならない時だ。韓米ＦＴＡの成否は産業界と政府、政界が力を合わせＦＴＡが国益増大の近道であることを実際に立証することにかかっている。