＃社長室を捨てて会議室で一日１９時間執務

資金の調達にあくせくし、ＮＴＴや政府省庁を駆け回りながら、新しい事業を始めて６カ月が過ぎた。 ２００１年末、これまでの実績をチェックする８時間の会議を行った。 私は絶望した。 サービスがうまく開通した使用者は２０万人にすぎなかった。 事業開始１年間で１００万人の加入者を集めると豪語した私だった。 会議が終わると、私は秘書に「今後１年間は誰ともゴルフの日程を入れないでほしい」と伝えた。 また「明日から私の執務室はヤフーＢＢ推進チームがある４階の会議室になる」と話した。 知る人はみんな知っているが、私は大のゴルフ好きだ。 自宅の地下に世界１０大ゴルフ場のシミュレーションプログラムを入れた個人練習室まで設置したほどだ。 ビル・ゲイツ・マイクロソフト創業者はその練習室を見て気に入り、シアトルの自宅に同じ施設を入れた。 その私が１年間はゴルフクラブを握らないと宣言したのだ。会議出席者は驚いた。

翌日から私は本当に４階の小さな会議室で執務を始めた。 一日に１５時間、１９時間…。 私が誰かに「３時に会おう」と話せば、それは必ずしも午後３時とは限らなかった。 午前３時にも会議を開き、必要ならいつでも夜を明かした。 事務所の中は職員の汗のにおい、数日間シャワーをしていない私の体臭が充満していた。

＃勝利で終わった‘桶狭間の戦い’

ここまでするのには理由があった。 私にとって超高速インターネット事業は‘桶狭間の戦い’だった。 日本の戦国時代、桶狭間で織田信長が２０００人ほどの兵士で数万人の大軍を退けた歴史的な戦いだ。 当時、私とソフトバンクの‘敵’はＮＴＴだった。 規模も、ノウハウも、資金も比較にならない会社に対抗して、日本に本当のインターネット時代を開くという一念で戦っていた。 また私たちには自信があった。 ＮＴＴは巨人だ。 それだけに重く、のろく、考えなければならないことも多い。 私たちは身軽だ。 少数精鋭の決死隊だ。 お互いを同志と信じて、一緒に情熱を傾ければ、必ず勝てると考えた。 そのように死ぬほど努力した結果、１１カ月で私たちは本当に１００万人の加入者を集めた。 その間行った強烈なプロモーションも効果が大きかった。 地下鉄駅で市民に無料で家庭用超高速インターネットのセットトップボックスを配った。 「加入申し込みから１０日以内に開設」という「１０営業日集中」キャンペーンも行った。 規模の経済と革新で市場と消費者に新鮮な衝撃を与えようと努力した。

こうして毎年１０００億円ずつ赤字が出る事業を４年間、徹底的に進めた。 ライバル会社も徐々に変わり始めた。 当初は消費者がヤフーＢＢへ行くのを防ごうとしていた人たちが、本格的なサービス競争に突入したのだ。 もう敵はいなかった。 ソフトバンクとＮＴＴは広い意味で、消費者の利益と便利のために共同で努力する一種の‘友人’になったのだ。 ０４年６月、ソフトバンクは日本テレコム買収に成功した。 日本テレコムは鉄道線を沿って開設された電話ネットワークを保有する日本国内の主要通信事業者だ。 おかげでヤフーＢＢのサービスは早期に安定化した。 ０５年にはついに黒字転換した。 桶狭間の戦いに勝利したのだ。


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