実際体験したことのない人は分からない。その虚しさと喪失感を。怒りが込みあがったりもする。最近、韓国社会に警戒令が下された「スポイラー（ｓｐｏｉｌｅｒ）」による被害の話だ。英語の意味を見ると「あることを台無しにする人や行動」と言える。韓国で「スポ」という略語で呼ばれたりもする、この犯罪に近い行為はブロックバスター映画をまだ見ていない人に最も面白いポイントや反転を公開してしまうことをいう。観客１０００万人を集めた映画『アベンジャーズ／エンドゲーム』、カンヌ国際映画祭の最高賞「パルムドール」受賞作『寄生虫（英題・パラサイト／Ｐａｒａｓｉｔｅ）』に必ず「スポ注意報」がつく。よっぽどでなければ「アベンジャーズの最高の敵はスポイラー」という話まで出てきたのだろうか。

映画史上最高の反転を駆使したという２０年前の映画『シックス・センス』（Ｍ・ナイト・シャマラン監督）は歴代級スポイラーが今でも膾炙されている。映画を見て劇場を出たある高校生が次の映画に入場する人々に向かって「ブルース・ウィリスが幽霊だ」と叫んだということ。その生徒は過ちを反省したのだろうか。

そこまで想像もできない想像力が創り出した名作の感動は一度逃がせば再び経験することは難しい。文化的戦慄が持続するためにはシャマラン監督やポン・ジュノ監督の天才的才能をスポイラーから守らなければならない。維持・発展させることができる興行も必要だ。

政府の政策も大きく変わらない。天才的才能は彼らに及ぶことはできなくても周到綿密に準備する必要がある。政策受容者の好感を得て共感につなげてほしい。最近、共に民主党のソル・フン最高委員が「政府が国際機関を通じて北朝鮮に食糧５万トンを支援する予定」と公開して統一部が仰天したことがあった。党・政関係で主導権を握るという与党の意欲は良いが、ややもすると興行を亡ぼす「スポイラー」になり得る。李海チャン（イ・ヘチャン）民主党代表も今月１８人の長官とリレー昼食会を開く。性急なスポよりは斬新なティーザー広告のように好感を作る知恵を見せてほしい。

キム・スンヒョン／政治チーム次長