――韓国政府の対応が混乱を加重させているようだ。

▽文＝最近のＴＨＡＡＤ議論を見る“幻影を追うゲーム”という気がする。米国政府はこの問題を韓米年次安保協議会（ＳＣＭ）や韓米軍事委員会（ＭＣＭ）で一度も公式に取り上げたことはなかった。メディアから飛び出してきたのだ。韓国政府内でそれぞれ異なるメッセージを送り右往左往する姿だ。政府の混乱した姿がメディアの過熱報道をあおった面もなくはない。

▽河＝国家安全保障会議（ＮＳＣ）が中心軸をしっかりと捉え官庁間の意見を交通整理すべきなのにそうできなくなっているという印象を与える。

――中国は過剰対応しているようだ。なぜそうだと考えるか。

▽文＝ＴＨＡＡＤ議論がメディアによって増幅されたので中国は韓国メディアに注目した。中国ではＴＨＡＡＤの韓半島配置が対北朝鮮抑制力を高めるよりも、韓日米３カ国のミサイル防衛体制構築と見る傾向が強い。北朝鮮に対する脅威より自分たちに対する脅威と認識することになったのだ。ＴＨＡＡＤが持ち込まれれば韓日米の南方三角軸と中朝ロの北方三角軸の間に対決構造ができ新たな冷戦構図ができるとみる。習近平中国国家主席は新たな冷戦体制を望んでいないので韓国政府がＴＨＡＡＤを持ち込めないように防ぐということだ。中国では「韓国がお金は中国で儲け安保は米国から得ている」という批判がある。

▽河＝もしＴＨＡＡＤの韓半島配置で中国が主観的に危機を感じるならば、不衝突と不対抗を名分としている新たな大国関係を指向している米国と中国が一次的に相互に説得しなければならない。

――ＴＨＡＡＤで北朝鮮のミサイル迎撃が可能なのか。

▽文＝たとえ迎撃能力が検証されたとしても韓半島の状況では北朝鮮の核ミサイル発射の兆しを事前に探知した時に迎撃が可能となる。北朝鮮が誘引用として先に在来式ミサイルを発射した時にＴＨＡＡＤ１基の砲台が最大４８発の迎撃用ミサイルをすべて消費すれば再装填して対応するのは技術的に大変だ。

――韓国政府に望む点があれば。

▽河＝韓国政府がＴＨＡＡＤ問題が持つ国防や外交などさまざまな側面の複合的要素を多様に検討しながらも言葉を慎んでいるのかもしれない。北朝鮮の攻撃用武器体系が持つ政治的そして軍事的効率性を最小化するためには確実な対応軍事的検討が必要で、同時に韓国の力だけで足りない場合に同盟国米国の抑制武器体制を活用するのかどうかと、こうした選択がもたらす中国の反応に対する外交的検討が同時に複合的に行われなければならない。

▽文＝なぜＮＳＣや国防部が戦略的に考えて国民的衆知を集められないのか残念だ。縦深が短い韓国的地形は防衛にとても弱い。北朝鮮がミサイルを撃ち続けるのは韓国を心理的パニック状態に追い込むための意図がある。こうしたものに対する総合的な評価を経て対案を作った状態でＴＨＡＡＤが出てきてこそ対国民説得になるのにそうできなかった。現政権の外交安保管理体系に革新が必要だ。国防部と外交部の立場が衝突すればＮＳＣが出なければならない。これを調整し、ひとつに統一され一貫した政策を出すことがＮＳＣの役割だが、今回はまったく作動できなかった。いまのＮＳＣは傍観者のように見える。（中央ＳＵＮＤＡＹ第４１９号）


ＴＨＡＡＤ韓国配置問題…各専門家の意見は（３）