<趙英男の日本文化ルポ>2.富士山に差し立てた太極旗?
やがて文化戦争の時代を迎えた。文化とは何か。多様さである。ユネスコ本部が、世界各国に文化の多様性という徳目を掲げ、勧告する以前に、私の考えている多様さの先決条件は、一言で「偏見のなさ」だ。日本を訪問し、それらを観察しながら得た最も大きな所感の一つも、日本社会の「偏見のなさ」だった。認めるべきものは認めて、生きていこう。
たとえば、私は早くからアメリカという国に留学し、6~7年間にわたって住んだことがあるが、当地で感じた最も重要な所感の一つも「偏見のなさ」だった。20年前、東洋人など見当たらない米南端の小都市で私は、英語が下手で背も鼻も低い東洋人の一人にすぎなかった。今振り返ってみても、米社会では偏見の影さえ見られなかった。信じようが信じまいが、私は日本の「偏見のなさ」を早くも30年前から感知していたのかも知れない。
1970年代初めごろ、明洞(ミョンドン)のオービスキャビンで一緒に歌っていた歌手、イ・ソンミの場合がそうだ。ある日、彼女が日本で成功した、との話が聞こえてきた。真に不思議に思えた。イ・ソンミが典型的な演歌歌手だったならば、それほど驚かなかったかも知れない。しかし、彼女はカーペンターズのようにソフトな音声だった。日本は、韓国人が見逃した音声までも受け入れる多様性の国だったわけだ。