観客席から歓声が上がった。 グラウンドに飛び出していきたくなった。 自分のことのようにうれしかった。 ‘後輩’李承燁(イ・スンヨプ、31、読売ジャイアンツ)が後半戦の開幕戦に、それも2打席連続で本塁打を放ち、不振から抜け出したからだ。 しかし‘先輩’の席はダグアウトではなかった。 ‘1軍打撃コーチ補佐’の金杞泰(キム・キテ、38)。 選手団エントリーに入れず、彼の席はダグアウトの後ろだった。 本塁打の場面は画面で見た。
試合が終わった後、先輩は後輩に「承燁、おめでとう」と言いながら肩をたたいた。 「先輩、ありがとうございます」と李承燁は礼を言った。 短い会話だったが、心からの言葉だった。 関節炎の指がどれほど痛いか、打撃感覚はどうかという話は必要なかった。 本塁打を打ち、それを確認するだけで十分だった。