キーウ（キエフ）など大都市で激しい市街戦を繰り広げたロシア軍とウクライナ軍が広大な平原である東部ドンバス地域に戦場を移した。戦争の行方を分ける大戦闘が秒読みに入った中で、軍事専門家らはドンバスでの決戦が「長く残酷な戦闘になるだろう」とした。

◇防衛に有利な市街戦の代わりに平野で

米ニューヨーク・タイムズと軍事専門メディアの「１９４５」などは１６日、大都市の高層ビルと地下道などの遮蔽物と隠れ場所を活用しロシア軍を効果的に撃退してきたウクライナ軍が大きく開けたドンバス地域での戦闘を控え兵器だけでなく戦略変更に入ったと報道した。ニューヨーク・タイムズは「これまでと全く違う様相で戦闘の本質が根本的に変わった」と伝えた。

これまで主要交戦は高層ビルと高い人口密度を持つ大都市で行われた。ウクライナ軍は固いコンクリート製ビルを防衛拠点とし、地下鉄のような地下通路に移動して奇襲でロシア軍を揺さぶった。ワシントンポストは「都市の複雑な地形は防衛する側にはるかに有利だ。侵略者の立場では高層ビルに潜む危険を避けるために途轍もない兵力と資源を投じなければならない」と伝えた。米シンクタンクＣＮＡのジェフリー・エドモンズ研究員は「ロシア軍は（戦争期間と費用のためではなく）市街戦では勝利できないという判断により戦線を東に移したもの」と話す。

これに対しドンバスは野原と農場だけだ。丘陵もほとんどない荒野だ。ドンバス紛争に参加したある退役軍人は「隠れる場所が全くない。砲兵が数十キロメートルの距離で砲火を浴びせる方式の火力戦は避けられない」と話す。

◇第２次大戦式の包囲・火力戦…「ロシア軍が望んでいた戦闘」

専門家らはロシア軍が第２次世界大戦当時にロシアのスターリングラード（現ボルゴグラード）での戦闘でドイツ軍をはね除けたのと同じ戦略を使うと予想した。１９４３年に当時のソ連軍はボルゴグラードの平原を横切って攻勢を始め、ドイツ軍を小単位に分けて包囲した後に砲兵戦で焦土化した。フィリップ・ブリードラブ元ＮＡＴＯ欧州連合軍最高司令官は「ロシア軍は開放された草原で火力により対決したかった。ドンバスでロシア軍が望んでいた戦争を始められるようになった」と話した。

ロシア軍は平原での大規模砲兵戦を控えて兵力を増強した。既存の３０個大隊戦術団（ＢＴＧ）３万人規模の兵力を今月に入り４０個ＢＴＧ４万人に増やした。また、キーウなど北部戦線から退却したロシア軍の兵力４万人のうち一部も数週間以内に東部戦線に再配置されるものと観測される。

これに対抗するウクライナ軍は数万人と推定される。これに先立ち東部戦線にはウクライナ軍約３万人がおり、最近キーウから主力部隊が配置中だ。ウクライナ軍はすでにロシア軍の包囲作戦を防ぐために集落につながる交差点を爆破し、貯水池の水門を開放するなど準備態勢に入った状態だ。

英紙ガーディアンは「東部に配置されるウクライナ軍は国内で最も専門的で意欲にあふれる部隊。ロシア軍が火力で優位を見せるがほぼ同等な水準になるだろう」と予想する。

西側は兵器を送りウクライナ軍を支援中だ。これに先立ち米国はドンバス戦闘の特性を考慮して射程距離が長い曲射砲と砲弾、Ｍ１１３装甲車２００台、大砲兵レーダーなどをウクライナに提供すると明らかにした。

◇「双方とも深刻な損失被るだろう」

ドンバス戦闘は長期化する可能性がある。米国と英国、ウクライナ政府当局と軍事専門家らはドンバス戦闘が数週間以内に始まり数カ月間続くだろうと予想する。ある米政府当局者は「（ドンバス戦線は）数週間戦線が動かない、退屈な泥仕合の戦争になるだろう」とニューヨーク・タイムズに話した。

軍事専門メディア「１９４５」は、「正直に言えばウクライナ軍が勝利する可能性は大きくない」とした。続けて「現実的にウクライナ軍は十分な兵力と装備をそろえられなかった。ウクライナ軍の最優先目標は初期攻勢で生き残ることとロシア軍が補給路を完全に遮断するのを防ぐこと」と付け加えた。

ポーランドの軍事コンサルティング会社ロハン・コンサルティングは「ドンバス戦闘の勝敗は予測しにくいが、戦闘が終われば双方とも攻撃と反撃を実行できないほど相当な打撃を受けることになるのは明らかだ。ウクライナは最後の１人まで戦闘を続けていく覚悟は明らかでロシア軍が被る損失も相当だろう」と予想する。