４・２７板門店（パンムンジョム）南北首脳会談以降、南北関係と韓国社会の雰囲気が変化し、「統一へのステップ」と呼ばれる脱北者社会が大きく揺れている。韓国行きを選択した脱北者は６月末基準で３万１８２７人。飢えと自由のない暴圧を避けようと北朝鮮を離れた脱北者にとって、世襲統治者の金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長が板門店で見せた笑顔は大きな衝撃だった。さらに対北朝鮮人権運動団体が次々と捜査線上に浮上したり告発されたりし、テロまで受けながら団体を引っ張ってきたエリート脱北者の活動が大きく委縮した。脱北者は「委縮という程度ではなく焦土化した」という。「現政権の政策が金正恩委員長の変化を引き出す」と言いながら過去の主張から方向転換した人たちもいる。２年前に柳京食堂の女性従業員を連れて脱北した支配人ホ・ガンイル氏が「誘引・拉致」などと発言しながら暴露を始めたのも脱北者社会の気流の一断面という分析も出ている。

北朝鮮政権を批判して人権の惨状を告発してきた脱北者は北朝鮮でエリート層に属していた人物だ。韓国に来てからは自身の職業や専攻を生かして団体を結成し、講演、セミナー、情報収集、北朝鮮変化運動を主導してきた。ＮＫ知識人連帯（代表キム・ホングァン）、自由北朝鮮放送（代表キム・ソンミン）、自由北朝鮮運動連合（代表朴相学）、脱北者同志会（会長チェ・ジュファル）、北朝鮮人民解放戦線（代表チェ・ジョンフン）などだ。入国当時基準で専門大以上の卒業者は５３００人。このうちおよそ半分が対北朝鮮人権運動に参加したり、脱北者の生活適応、就職と青少年教育、性暴行問題などに集中しているという。

北朝鮮人権団体が一部の市民団体とメディアのターゲットになったのは昨年の朴槿恵（パク・クネ）大統領弾劾以降だ。咸興（ハムフン）コンピューター技術大学教授だったキム・フングァン代表は韓国哨戒艦「天安」爆沈以降、北朝鮮サイバー部隊の「韓国の自作劇」コメント攻撃を捜し出して防御の書き込みをした。容疑は「公職者選挙法」違反。「積弊」捜査の一環だった。大統領選挙時期とは関係なく、不起訴となった。今年に入って行政安全部（行安部）の調査以降、補助金執行の過失が明らかになり、一部の支援金を返還するよう通知を受けた。キム代表は「関連報道の過程で偽の情報を売る団体として罵倒され、脱北者の家にまでカメラが押し寄せた」とし「悪意的にイメージを毀損した」と強調した。キム代表は「生命を脅かされ、人権運動に参加していた脱北者が生計に集中するケースも出てきた」と述べた。

２００６年に北朝鮮内政治犯収容所の惨状を扱ったミュージカル『燿徳（ヨドク）ストーリー』で国内外で注目されたチョン・ソンサン監督は最近、仁川（インチョン）の冷麺店「平光玉」を開業９カ月で閉鎖した。４月のセウォル号断食座り込みに反対する集会を扱った地上波番組にチョン監督の姿が１０秒ほど放送された影響だ。放送後、「平光玉」にはスプレーでセウォル号のリボンが描かれ、誹謗内容が書かれた紙も貼り付けられた。区庁を通じて飲食店に対する告発が続いた。同業者３人の個人情報まで調べて脅迫するなどのあらゆる攻撃で結局、チョン監督はお手上げした。「平光玉は平壌（ピョンヤン）の光復（解放）のためにという意味を込めた商号だ。大韓民国が目を閉じる北朝鮮の人権、真実を語るために情熱を注いだが、ある日突然、私がユダ（イエスを裏切った弟子）になってしまった。左・右政治的理念はともかく、民主主義社会でどうすれば生計手段まで奪うことができるのか。政治的な基準でかき回す勢力の人民裁判式攻撃だ」。チョン監督は「私は大韓民国を愛するしかない大韓民国の国民だ。今回の事態は私が克服しなければいけないヤマ」と語った。

こうした雰囲気が１年余り続くと、北朝鮮人権運動団体に対する企業と個人の後援支援金も中断した。余波は放送と講演現場にも続いた。活動脱北者の多くはテレビ出演と軍部隊、学校、企業、新規脱北者対象の講演で生活費を稼ぐ。取材に応じた脱北者は「統一・安保講演からも排除され、テレビ出演の依頼もない」と伝えた。講演を続ける場合、ガイドラインもあるという。６年前から安全保障関連の講演をしてきたＡ氏は「昨年の秋ごろ『人権』という言葉を抜けと言われ、年初には『安保』という言葉を抜いて和解・平和などの話をしてほしいと言われ、要領よくやっている」と説明した。娯楽性脱北者番組のほかには脱北者はほとんど見られない。脱北者は４月以降、放送局から金正恩と李雪主（イ・ソルジュ）を敬称を付けて呼ぶようにと言われた。Ｂ氏は「放送局が『委員長』『女史』の呼称を付けてほしいと言うので、私はできないと言った。彼らに敬意は全くないと言ってそのまま討論したところ、その後は連絡がない」と述べた。


北朝鮮人権を告発してきた脱北エリートが崩壊する（２）