「アップルペイ（Ａｐｐｌｅ　Ｐａｙ）が物の購買方式を永遠に変えるだろう」。アップル社のティム・クック最高経営責任者（ＣＥＯ）が今月、「アップルペイ」というモバイル決済機能を紹介する時に強調した大胆な発言だ。アップルペイはｉＰｈｏｎｅ６に搭載された近距離無線通信（ＮＦＣ）機能を利用し、クレジットカードなしに決済できるサービス。加盟店で決済をする時、事前にクレジットカード番号を登録したｉＰｈｏｎｅ６を取り出し、ホームボタンに指をのせればよい。ｉＰｈｏｎｅ６のホームボタンに内蔵された指紋認証セキュリティー機能が、クレジットカードの署名やパスワードの入力の代わりとなる。

しかしクックの言葉のようにアップルペイの成敗を予断するのは容易でない。実際、アップルペイは新しい技術ではない。国内の金融機関をはじめ世界の多くの企業がＮＦＣを活用したモバイル決済サービスを出した。グーグルも３年前に数百万ドルを投資し、ＮＦＣ方式の「Ｇｏｏｇｌｅウォレット」サービスに入った。しかしこれを使える加盟店が少なく、大衆化しない段階だ。加盟店が費用をかけて専用端末を設置しようとしないからだ。消費者もモバイル決済が便利だという点を認識しながらも、従来のクレジットカード使用の習慣を変える必要性を感じなかった。一部の専門家の間で、アップルペイが同じ道を歩むのではという見方が出ている理由だ。

しかしアップルは今度は違うという立場だ。まずアップルは主な金融機関を引き込み、アップルペイのインフラ拡散に力を注いだ。アップルはアメリカンエキスプレス・マスター・ビザの３大カード会社と提携した。米クレジットカード決済の８３％はこれらのカードで行われている。