－－インターネットが人類の幸せに寄与することは確かか。

「そのような疑問を抱くのは『経済の発展が世界をもっと暮らしやすくするだろうか』と疑うようなものだ。経済成長はより良い医療保障、より良い教育、よりいっそう民主的な国家運営（ガバナンス）を保証する。韓国・台湾・香港・シンガポールを見れば、経済の発展が生活をどれほど豊かにするか実感できる。コンゴで魚を売って生計を維持する女性に会った。この女性はオンライン注文を受けるようになり、魚をあらかじめ確保して腐らせることがなくなった。この女性の家族は飢えから抜け出す確率が高まった」（シュミット会長）

「２００９年にアフガニスタンの女性監獄に行った時、収監者の大半が性暴力や姦通の被害者でありながらも、自分が罪を犯したと思っていた。彼らがインターネットを通じて自分に人権が保障されていることを知ることになれば、事情はかなり変わるだろう」（コーエン）

－－インターネットのために人類は新たな危険を迎えたりもした。家で爆弾をつくる方法を知り、３次元（３Ｄ）プリンタで私製銃を作ることも可能になった。

「新技術が新しい危険を招いた側面があるのは確かだ。ところがＩＴ技術がテロの危険を減らす側面もある。あるタリバン指導者は数年間隠れていたが、親戚の結婚式に行こうと電話をして隠れ場所が露出した。最近の米ボストン爆弾テロ事件で容疑者が警察にすぐに捕まったのは、携帯電話を車の中に置いて位置が追跡されたからだ。インターネットはテロ犯や犯罪人の活動を大きく制約したりもする。インターネットを通じて３Ｄプリンタで銃を作るファイルを受ける瞬間、あなたは警察の要注意人物リストに含まれる可能性もある」（シュミット）

－－最近、韓国の歌手ＰＳＹと一緒に撮った写真が韓国で話題になった。ＰＳＹはグーグルのユーチューブが作ったスターでもある。ＰＳＹブームの原因は何だと思うか。

「私はかなり以前からＫ－ＰＯＰファンだったが、いつかアジアを抜け出し、米国をはじめとする世界で人気が高まるだろうと期待していた。ところがなぜ、よりによってＰＳＹが突然世界で最も有名な韓国人になったのかはよく分からないというのが率直な思いだ。ＰＳＹにも尋ねたことがあるが、彼は『私はただ人々を笑わせようとしただけ』と答えた」（シュミット会長）

－－韓国の新しい大統領は「創造経済」を経済政策の核心として強調している。これを実現するためには何を優先的に行うべきだと考えるか。

「韓国政府に基礎科学、教育、創業精神の育成、女性の社会的進出にもう少し力を注いでほしいと言いたい。特に女性が創業に参入できる環境をつくることを願う」（シュミット会長）

「韓国は北東アジアはもちろん、世界の核心国家に浮上した。韓国のように物理的な力と“サイバーパワー”を同時に持つ国は多くない。世界最高レベルの移動通信機器や鉄鋼を作る技術力とソフトウェア的な力を結合させれば、非常に大きな国家的な機会をつかむと信じている」（コーエン所長）

－－グーグルも多くの挑戦に直面している。特に欧州では市場独占、プライバシーの侵害などの論争に巻き込まれている。国家権力と「サイバー権力」の衝突とも映っている。

「欧州での問題はそれほど心配していない。民主主義が発達しているところでは、中流層が追求する価値の方向に社会が進む。従ってこうした問題もそれほど深刻なものではない。本当に心配している問題は、中国のように市民が望むことを無視するところで生じることだ」（シュミット会長）

「国家はインターネット世界に対する理解にいつも遅れをとる。０６年から４年間にわたり米国政府で働いた当時を振り返ると、官僚はユーチューブやフェイスブックが何か、あまり理解していなかった。彼らは一時的な流行だと考えていた。ところが今、彼らは『私たちが当時、世界を理解するうえで非常に重要な部分を見過ごした』と話している」（コーエン所長）

－－韓国を訪問する計画は。

「今年秋に行こうと思う。韓国でアンドロイド（グーグルのスマートフォン運営システム）は爆発的に成功した。韓国には私たちが一緒にしたい事業が非常に多い」


グーグル会長「何でも速くて勝負欲が強い韓国人が好き」（１）