民主統合党の文在寅（ムン・ジェイン）候補が５日、ソウル竜山区漢江路の安哲秀（アン・チョルス）氏の自宅を突然訪問した。しかし安氏は外出中で会えなかった。

文候補はこの日午前１０時３０分ごろ、随行員２人と安氏の自宅がある竜山の住商複合ビルに行った。文候補はビル１階のフロントデスクで安氏が自宅にいるかどうか確認し、外出中であることを知りながらも３０分間ほど待った。しかし安氏は現れず、引き返した。一部の住民は文候補の訪問をフェイスブックなどで知らせた。

安氏側のユ・ミンヨン・スポークスマンは「（文候補の訪問は）事前に調整されたものではない」とし「訪問するという連絡はあったようだが、他の日程のためにその時間には家にいなかった」と伝えた。「安氏は文候補が到着したことを知っていたのか」という質問には、「連絡があったかもしれないが、安氏はその時いなかった」とのみ答えた。

会談の不発は、安氏が文候補との対面を避けていることを表している。文候補が訪問すると連絡しても留守にし、家の前で待っていることを伝えられても帰宅せず、別の場所で会うこともなかった。このため、２人の間の溝はさらに深まったという観測が出ている。文候補の訪問は、それだけ民主党が差し迫った状況にあることを見せている。

こうした事例は以前にも見られた。０２年大統領選挙で当時の盧武鉉（ノ・ムヒョン）民主党候補は「支持撤回」を宣言した鄭夢準（チョン・モンジュン）候補の気持ちを変えようとソウル城北洞の自宅を訪問した。０７年大統領選挙では無所属の李会昌（イ・フェチャン）候補がハンナラ党朴槿恵（パク・クネ）議員の支持を得るため、ソウル三成洞の自宅を３度も訪ねた。

安氏が文候補支援に消極的な態度を見せる中、安氏と民主党出身の側近の間にも不和説も出ている。文候補支援の時期と程度をめぐる意見の違いのためだ。安氏はこの日、朴仙淑（パク・ソンスク）前共同選挙対策本部長らと会い、文候補支援方法について議論したが、隔たりを確認して終わった。朴元本部長らは安氏に対し、「すぐに文候補に対する全面的な支援をするべき」と促したが、安氏は「私が判断する」と答え、冷たい空気が漂ったという。この日、文候補支援方法を議論するために開く予定だった安氏側の対策会議と記者会見も突然キャンセルとなった。

安氏は前日にも、ソウル鍾路（チョンノ）の選挙キャンプで文候補支援について議論中だった参謀会議に予告なく現れ、「今日は結論を出さないでほしい」と伝えた後、席を立ったと、出席者が伝えた。民主党出身の参謀が文候補に対する全面的な支援に動いているのに対し、安氏が連日制約を加えたのだ。安氏は民主党出身の一部の側近の“メディアプレー”に不快感を示しているという。一部の側近がメディアに「近く支援遊説に合流する」という言葉を流しながら、自分に圧力を加えているということだ。

ある核心側近は「すでに安氏は白衣従軍すると話した。最も低いところで静かに文候補を支援するという意味」とし「一部の人が安氏の考えを勝手に解釈し、特定の方向に追い込んでいる」と批判した。別の側近は「安氏が周囲の人々に自重してほしいという考えを伝えたものと聞いている」とし「一部の参謀が自分の政治的な将来を考えて利用しようと考えているようだ」と述べた。

安氏は周囲の人たちに「今まで出てきた話を整理してみると、失敗した原因が１０個ほどある。少数の人に多くの権限を与え過ぎたのが失敗の原因の一つのようだ」という趣旨の話もしたという。選挙戦を総括した主要人物に対する不満を表したのだ。

一方、文候補は、曺国（チョ・グク）ソウル大法学専門大学院教授、チン・ジュングォン東洋大教授、小説家ファン・ソクヨン氏ら全野党の要人を含む「大統合国民連帯」を早ければ６日に発足する計画だった。しかし安候補の支援を引き出すのに失敗し、野党を総結集するという戦略には支障が生じた。

文候補はこの日午後、弘益大の前の遊説で、「感動を与える候補一本化ができず申し訳ない。安候補の支持者の虚脱感、喪失感が大きいと考える」とし「それでも政権交代と新しい政治の夢をあきらめることはできない。今からまた力を合わせなければいけない」と呼びかけた。